新しい柳刃を仕入れました
某一流メーカーのプロ仕様の9寸でメーカー定価は¥16000、実勢価格で一万くらいです。
目のある人が見ればすぐメーカーが割れるので画像はのせません。
材質はモリブデンバナジウム鋼(医療用メスと同じ素材)で刀身にも狂いは無く大まかな形はよいのですが細部が雑です。
新品ではシノギから刃先までベタ研ぎで、糸引き刃というより1/3ミリくらいの二段刃になっています。
まるでカッターナイフですね。
爪にのせれば滑って使えないので試し切りするまでなくさっそく研いでみました。
まず切刃のムラを#1000の中砥で抜き、1/3ミリくらいの二段刃を刃先から3ミリほど研いで消しました。
次に#3000でさらに1ミリほど伸ばして小さなはまぐりにしました。
裏のカエリ加減ではINOX鋼より硬度は高そうに見えます。
まあ、HRC硬度で60だ59だと言っても実際に研いで使ってみると硬度と粘り強さは別物で
どこまで薄く研いで切れ味と刃持ちを出せるかは使ってみなければ分かりません。
仕上げは北山の#8000で、最後に45°くらいの糸引きをつけました。
裏すきはひどいです。少し研いでみると刃先側で狭い所は1ミリ、一番広い場所で3ミリ近く出ました。
峰側は、さらに酷く裏のつかない所さえあります。
仕上げ砥石が狂っているのかと、砥石面を確認してしまいました。
たしかにプロ用です、包丁各部分の機能を理解した研ぎが出来ない人には使えません(笑)
峰のムラもゴシゴシと抜きたいしマチや顎の形状もなんとかならんかと言うくらい不細工ですが
すべて修正できます。裏のすきもその気になれば少しくらいは直せます。
全体の形や手に持った感覚はバランスがよく、使いやすそうです。
これで材質に問題がなければ一万円は高くないです。
有名ブランドなので材質は大丈夫でしょう。
ふだんは皮引きや冊取りやその他雑用に一丁、刺身を引く専用に二丁と計三丁の柳刃を用意します。
これは前者用です。
錆びないINOXを皮引きや雑用に使い始めましたが何度か研いでポイントがつかめたら予想以上に切れるし刃持ちもいいのでランクを上げて刺身を引く方に回しました。
今回の柳刃はその後釜です。
砥石と包丁に10万の予算があるとします。
9万の青の本焼きと一万の砥石を買う方がいいか、
3万の霞を二丁そろえて砥石に4万かけるか
どちらがいいかは仕事によって違うでしょう。
自分のように一日最大で40名さまの刺身(キロサイズの鯛や平目が10匹から12匹)を引くならば断然後者です。
いくら長切れする本焼きでも後半はへたるし、また毎日の研ぎとなると本焼きはしんどいです。
それより皮引きや雑用専用の柳刃一丁と刺身を引くだけのために研ぎ上げた二丁の柳刃がスタンバイしていたほうが安心です。
カウンター仕事のようにお客さまから見えるなら、黒檀柄、鏡面の本焼きが欲しくなりますが
あくまで裏方ですから機能第一です。
切れ味と刃持ちをどこでバランスさせるかは、これからです。
研いだ加減や全体の姿では使いやすい柳刃になると思います。
気分的には可もなく不可もなし、個性(クセ)がなさそうで面白みに欠ける包丁ではあります。
この手の包丁は店で手に取ってみるまでもなくメーカーがしっかしているので画像で全体の姿とサイズ、材質の説明さえ読めばネットで安心して買えます。
今の時代に合った包丁なのでしょう。
2010年 12月 09日 | Others | 新しい柳刃を仕入れました はコメントを受け付けていません